著者 maroke
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モントリオールを歩いていると、この街は観光名所だけでなく“食べること”そのものが旅の楽しみになる街だと感じます。フランス語圏らしい食文化がありながら、東欧系ユダヤ人の移民文化も深く根づき、さらにケベックならではの庶民的な料理が街のあちこちに残っています。

今回の家族旅行では、定番と言われるものを実際にいくつか食べ歩いてみました。結論から言うと、初めてモントリオールを訪れるなら、プーティン、スモークミート、モントリオール式ベーグルの3つはぜひ一度試してほしいです。そこに市場歩きを加えると、この街の食文化がかなり立体的に見えてきます。
まず外せない。ケベックのソウルフード「プーティン」
最初に食べておきたいのが、ケベックを代表する料理のプーティンです。フライドポテトにフレッシュなチーズカードをのせ、その上から熱いブラウングレービーをたっぷりとかける。見た目はかなり豪快ですが、実際に食べてみると、この3つの組み合わせが驚くほどよくできています。

今回訪れたのは、ラ・フォンテーヌ公園の近くにあるLa Banquise。モントリオールでプーティンを調べると必ずと言っていいほど名前が出てくる店で、公式サイトでもクラシックを含む多数のバリエーションを展開しています。
食べていて面白かったのが、チーズカードの食感です。日本で一般的な溶けたチーズとは違い、形が残ったまま少し弾力があり、噛むと“キュッ”とした独特の歯触りがあります。そこに熱いグレービーが絡み、下のポテトは時間とともに少しずつソースを吸っていく。最初のカリッとした部分と、後半のしっとりした部分で食感まで変わっていきます。
かなりボリュームがあるので、旅行中のランチなら家族でシェアするくらいでも十分だと思いました。特に暑い日の昼間は、無理に一人一皿にせず、少しずつ味わうくらいがちょうどいいです。
肉の迫力ならSchwartz’s。モントリオール名物スモークミート
もうひとつ、モントリオールで外せないのがスモークミートです。なかでも有名なのが、サン・ローラン通りにあるSchwartz’s Deli。1928年創業の老舗で、現在も同じ場所で営業を続けています。
モントリオールのスモークミートは、牛のブリスケットをスパイスで漬け込み、燻製し、さらに蒸して仕上げるのが特徴です。Schwartz’sでは肉を約10日間マリネし、一晩燻製したあと、日中に蒸して、注文ごとに手切りすると公式に説明しています。
食べ方は驚くほどシンプルです。薄いライ麦パンに、分厚く切られたスモークミートとマスタード。派手な具材が入っているわけではありません。それでも肉そのものの香りと塩気、脂の甘みが強く、サンドイッチとして成立しています。
店の外観も含めて“昔ながらのデリ”という雰囲気が残っていて、料理だけではなく店そのものがモントリオールの食文化の一部になっているように感じました。行列ができることもありますが、初めてなら一度は体験しておきたい店です。
ニューヨークとは別物。モントリオール式ベーグルの軽さ
モントリオールには、独自のベーグル文化があります。有名なのがFairmount BagelとSt-Viateur Bagel。どちらもMile End周辺を代表する存在です。

モントリオール式ベーグルの特徴は、手で成形し、湯通ししてから薪窯で焼くこと。St-Viateurでは、生地を手で丸め、ハチミツを加えた湯でボイルし、薪窯で焼き上げる製法を現在も続けています。Fairmountも1919年に始まったモントリオール最初期のベーグル店として、手作業と薪窯の伝統を受け継いでいます。
実際に食べると、一般的なベーグルから想像する“ずっしり感”とは少し違います。細めで輪が大きく、表面には薪窯ならではの香ばしさがあり、中はもっちりしながらも比較的軽い。焼きたてなら、そのまま何もつけずに食べても十分おいしいです。
個人的には、これを朝食や街歩きの途中のおやつにするのがちょうどいいと思いました。プーティンやスモークミートがかなり重めなので、その間にこうしたシンプルなパンが入ると、旅行中の食事のバランスも取りやすくなります。
ジャン=タロン市場を歩くと、“ケベックの食卓”が見えてくる
レストランだけでなく、ぜひ立ち寄ってほしいのがジャン=タロン市場です。モントリオール北側のリトル・イタリーにある大きな公共市場で、野菜、果物、チーズ、肉、パン、メープル製品などが並びます。

私たちは土曜日の午前中に訪れました。夏の市場は特に活気があり、通路を歩くだけでも楽しい。色鮮やかなベリー類や野菜が山積みになり、店ごとに並べ方も違います。観光客向けのお土産店を見るのとは違って、地元の人が普通に買い物をしているところに混ざれるのが市場の面白さです。

小さな子ども連れなら、朝の比較的涼しい時間に訪れて、果物や軽食を買いながら歩くのがおすすめです。市場を歩いていると、“名物料理”だけでは見えない日常の食文化が少し身近になります。
この3つだけで、モントリオールの歴史まで見えてくる
プーティン、スモークミート、ベーグル。一見すると、まったく別々の料理です。でも実際に街を歩きながら食べてみると、それぞれがモントリオールという街の成り立ちを映していることに気づきます。
プーティンはケベックの庶民的な食文化。スモークミートとベーグルには、東欧から移住してきたユダヤ系コミュニティの歴史が色濃く残っています。そして現在のモントリオールは、フランス語文化を軸にしながら、世界中の人々が暮らす多文化都市です。
食べ物を入口にすると、その背景にある移民、言語、宗教、地域文化まで自然と興味が広がっていく。これは今回の旅行で特に面白いと感じた部分でした。単に“おいしいものを食べた”だけでは終わらないのが、モントリオールの食の魅力だと思います。
ただし全部を一日で食べるのは、かなり重い
どれもおすすめですが、プーティンとスモークミートはかなりボリュームがあります。短い滞在だからといって、プーティン、スモークミート、ベーグルを一日に詰め込むと、後半は味より満腹感のほうが勝ってしまうかもしれません。
私なら、プーティンはランチ、スモークミートは別の日、ベーグルは朝食か軽食というように分けます。小食の人や子ども連れなら、シェア前提でも十分です。脂っこい料理が得意でない場合は、ジャン=タロン市場で果物やパンを買ったり、カフェを挟んだりしながら無理なく楽しむほうが、この街の食を長く楽しめます。
モントリオールでは、観光の予定に“食べる時間”を入れておきたい
今回モントリオールを旅して、食事は観光の合間に済ませるものではなく、それ自体を目的にしていい街だと思いました。La Banquiseでプーティンを食べ、昔ながらのデリでスモークミートを味わい、Mile Endで焼きたてのベーグルに出会い、ジャン=タロン市場を歩く。それだけでも、この街の輪郭がかなり見えてきます。
初めて訪れるなら、まずはプーティン、スモークミート、ベーグルの3つから。そこに時間があれば市場を加えてみてください。フランス語が聞こえる北米の街で、いろいろな文化が一皿の中に混ざり合っている——そんなモントリオールらしさを、きっと味わえると思います。
