カナダの都市と聞くと、英語が当たり前に通じる国という印象を持つ人が多いかもしれません。実際、カナダの多くの都市では英語が主に使われています。しかし、モントリオールの街を歩いていると、少し不思議な感覚に出会います。
耳に入ってくる会話、看板、地下鉄のアナウンス、レストランのメニュー。どこを見ても、どこを聞いてもフランス語が溢れているのです。

カナダにいるはずなのに、まるでヨーロッパの街に迷い込んだような感覚。モントリオールを訪れると、多くの人がまずこの「言葉の違い」に驚くことになります。
ここでは、なぜモントリオールではフランス語が公用語なのか、そして街中にフランス語が溢れていることの面白さについて紹介してみたいと思います。
カナダなのにフランス語?その理由
モントリオールがあるケベック州では、フランス語が公用語です。これはカナダの中でも少し特別な事情によるものです。
もともとこの地域は、17世紀にフランス人によって開拓された「ヌーベル・フランス」という植民地でした。現在のモントリオールやケベックシティは、そのフランス植民地時代の中心都市として発展してきた街です。

その後、1763年のパリ条約によってフランスはこの地域をイギリスに譲ることになります。しかし、住民の多くはフランス系のままでした。イギリスは統治を始めましたが、フランス系住民の文化や言語を完全に変えることはできませんでした。
結果として、ケベックではフランス語とフランス文化が強く残り続けることになります。
現在でもケベック州ではフランス語の文化を守るための法律があり、行政、教育、看板、広告などは基本的にフランス語が中心になっています。こうしてモントリオールでは、北米にありながらフランス語の文化が色濃く残る独特の都市が生まれました。
街中の看板はほとんどフランス語
モントリオールを歩いていると、まず目に入るのが街中の看板です。
地下鉄の案内表示、道路標識、レストランのメニュー、ショップの看板。ほとんどがフランス語で書かれています。英語表記があったとしても、フランス語が必ず上に大きく表示されています。
これはケベック州の「フランス語憲章(Bill 101)」という法律によるもので、公共の表示ではフランス語が優先されることが定められています。
例えば、ファストフード店でも日本で見慣れたメニューとは少し違う表記になっています。
「Chicken」ではなく「Poulet」
「Open」ではなく「Ouvert」
「Exit」ではなく「Sortie」
英語圏の国のはずなのに、街の言語が完全にフランス語になっている。このギャップは、歩いているだけでもとても興味深いものです。
聞こえてくる会話もフランス語
街のカフェに入ってみると、さらに面白いことに気づきます。周囲の会話のほとんどがフランス語なのです。
北米の都市なのに、聞こえてくるのは英語ではなくフランス語。カフェの店員同士の会話、隣のテーブルの会話、通りを歩く人の会話。街の空気そのものがフランス語で満たされています。
もちろん英語も通じます。モントリオールは観光都市でもあるため、多くの人が英語を話すことができます。しかし、街の日常の言語は明らかにフランス語です。
この「英語も通じるけれど、基本はフランス語」という独特のバランスが、モントリオールの面白さでもあります。

北米とヨーロッパが混ざる街
モントリオールの魅力は、この言語の背景が街の雰囲気そのものにも影響していることです。
石造りの建物が並ぶ旧市街、テラス席のあるカフェ、ゆったりとしたレストラン文化。北米の都市でありながら、どこかヨーロッパの街を歩いているような感覚があります。
英語文化の北米と、フランス文化のヨーロッパ。その両方が自然に混ざり合っている都市は、世界でもそれほど多くありません。
モントリオールを歩いていると、まるで二つの文化が重なっている街の中を歩いているような不思議な感覚になります。
街歩きが楽しくなる「言葉の違い」
旅行の楽しさは、景色や建物だけではありません。街の言葉や文化に触れることも、大きな魅力の一つです。
モントリオールでは、普段聞き慣れないフランス語が街中に溢れています。意味がわからなくても、その響きや表記を見ているだけで、異国に来たという実感が強くなります。
カナダの中にありながら、まるでフランス文化圏にいるような体験ができる街。それがモントリオールです。
街を歩きながら看板を眺めたり、カフェで周囲の会話に耳を傾けたりするだけでも、この街の独特な歴史と文化を感じることができます。
モントリオールを訪れたときは、ぜひ建物や観光地だけでなく、「街の言葉」にも少し注目してみてください。きっと、この街が持つ面白さをより深く感じられるはずです。